人事労務 F/U NO.29
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男性の育児取得を促進
改正育児・介護休業法のポイント
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
改正育児・介護休業法等が6月3日に成立、6月9日に公布されました。現在、男性の育児休業取得率は数パーセントの低水準を推移していますが、政府はこれを令和7年までに30%に引き上げることを目標にしています。今回の改正は、男性の育児休業の取得を推進するための内容が中心となっています。
1.出生直後の育休を取りやすく
今回の改正の目玉は、この出生直後8週間以内に4週間まで取得できる「柔軟な育児休業」です。女性であれば産休期間にあたるので、報道では「男性の産休」などと言われています。
現行の育児休業ももちろん出生直後に取得することができますが、新制度では、より男性が取得しやすくなるようにさまざまな条件緩和がおこなわれています。
まず、休業の申出は2週間前まででかまいません(現行制度では1ヵ月前まで)。また、2回に分けて取得できるため、まとめて休むのが難しい場合でも繁忙期を避けて取得することが可能です。
休業中に一部就労することも認められています。ただし、労働者の意に反して働かせることがないよう、あらかじめ労使協定を締結した上で、労働者と使用者が個別に合意した範囲内で就業が可能になります。
在宅勤務が広がる中、育児休業中でも少しは仕事ができるとなれば取得しやすくなる人も増えるでしょう。
なお、省令で就業可能日数等の上限(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分)が設けられる予定です。
2.対象者に意向確認を義務化
制度が整っていても、職場の雰囲気や上司からの圧力によって育児休業を取得できない男性が多いようです。
改正法では、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置を事業主に義務付けています。具体的には、研修、相談窓口設置等の複数の選択肢からいずれかを選択することになります。
また、(本人または配偶者の)妊娠や出産を申し出た従業員に育児休業制度等を周知すること、制度利用の意向確認をすることが企業に義務付けられます。子供が生まれると知ったら、男性でも女性でも育児休業を取るつもりかどうか、企業側から聞かなければならないのです。
3.育休の分割取得
これまで原則1回だった育児休業を、2回まで分割して取得できるようになります。男性の場合は、いわゆる「男性の産休」もあわせると最大4回の分割取得が可能になるということです。
また、保育所に入所できない等の事情があって1歳以降も育児休業を延長する場合についても柔軟に取得できるようになります。これまでは延長後の育児休業開始日は1歳時点、1歳半時点に限定されていましたが、改正後は延長期間の途中からでも取得が可能となります。これにより、延長期間に夫婦交代で育児休業を取得できるようになります。
4.有期雇用労働者の取得要件緩和
有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止されます。ただし、労使協定を締結した場合には勤続1年未満の労働者を対象外とすることができます。
5.育休取得状況の公表を義務化
従業員数1000人超の大企業については、男性の育休取得率の公表が義務付けられます。具体的な公表内容は、男性の育児休業等の取得率または育児休業等および育児目的休暇の取得率となる予定です。
6.育児休業給付も新制度に対応
雇用保険の育児休業給付も、いわゆる「男性の産休」や分割取得などに対応して支給されるようになります。
また、出産日のタイミングによって育児休業給付の受給要件を満たさなくなるケースがあったことから、この問題を解消するための特例が設けられました。
7.社会保険料の免除要件を変更
ほぼ同時期に関連法も改正され、育児休業中の社会保険料免除のルールも変わることになりました。
現行法では、月末時点で育児休業を取得している場合に当月の社会保険料が免除される仕組みのため、たとえば9/1~9/29など月末を除く月内で短期間の育児休業を取得した場合は社会保険料が免除されませんでした。改正後は2週間以上の育児休業であれば月内でも免除対象になります。
また、月末に1日だけ育児休業を取得して賞与の保険料免除を受けるといった行為を防ぐために、賞与については1ヵ月を超える育児休業のみ免除対象とすることになりました。
主な改正スケジュール | |
令和4年4月から |
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令和4年10月から | 社会保険料の免除要件を変更 |
令和4年秋から※ |
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令和5年4月から | 育休取得状況の公表を義務化(大企業) |
※公布(6/9)後1年6ヵ月以内の政令で定める日 |