人事労務 F/U NO.49
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1.正社員のための休憩室、パートに使わせなければならない?
2.障害者雇用率、来年4月より段階的に引き上げ
(執筆者)社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
1正社員のための休憩室、パートに使わせなければならない?
倉庫をかたづけて休憩室にしました。すこしぜいたくに改装したので正社員だけに使わせようとしたら、パート従業員に違法だといわれました。本当ですか?
指摘されたとおり、正規雇用とパートタイマーや有期雇用の従業員との間で不合理と認められる待遇の格差がある場合、いわゆる「同一労働同一賃金」のルールに違反する恐れがあります。これは賃金に限らず福利厚生にも適用されるルールです。
① 同一労働同一賃金とは
パート有期労働法では、通常の労働者(正社員)と短時間労働者(パートタイマー)や有期雇用労働者の間で、不合理な待遇の格差を禁止しています。不合理とは、説明がつかないような待遇差ということです。
また、職務内容などの程度が異なる場合は、その程度に応じた待遇(均衡待遇)とし、職務内容などが正社員とほぼ同じであれば差別のない待遇(均等待遇)とするよう求めています。
② 福利厚生には
ただし、福利厚生については、職務内容などで待遇差を考えるものではありません。食事をする、休憩するなどは、正社員、パートタイマーの区別なく誰もが必要な行為だからです。ですから、基本的には正社員とパートタイマーを同じにする必要があるのです。
厚生労働省では、このような判断の基準を分かりやすくするためにガイドラインを公表しています。
ガイドラインにある一般的な福利厚生の内容とその判断のポイントは下の表のようなものです。下線の部分は判断の要件を示している部分です。
パートタイマー・有期雇用労働者の待遇に関して原則となる考え方 | |
福利厚生 | 原則となる考え方 |
福利厚生施設 (給食施設、休憩室、更衣室など) |
正社員と同一の事業所で働く場合は、正社員と同一の福利厚生施設の利用を認めなければならない。 |
慶弔休暇、健康診断の際の勤務免除・受診時間の給与保障 | 正社員と同一の慶弔休暇の付与などをおこなわなければならない。 |
病気休職 | 正社員と同一の病気休職の取得を認めなければならない。なお、有期雇用労働者の場合、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない。 |
法定外休暇 (勤続年数に応じて取得を認めるもの) |
正社員と同一の勤続期間である場合は、正社員と同一の法定外休暇を付与しなければならない。なお、有期契約を更新している場合、最初の労働契約から勤続年数を通算する。 |
ご質問の「休憩室」については、「同一の事業所で働く」者であれば、正社員とパートタイマーの区別なく使用させるよう示しています。
③ 問題とならない事例
ガイドラインでは、このような場合は問題ないという事例も書かれています。たとえば、次のようなものです。
正社員と同様の出勤日が設定されているパートタイマーAには正社員と同様に慶弔休暇を付与しているが、週2日の勤務のパートタイマーBには、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与している。
1年契約の有期雇用動労者について、病気休職の期間は労働契約の期間が終了する日までとしている
長期勤続者を対象とするリフレッシュ休暇について、業務に従事した時間全体を通じた貢献に対する報酬という趣旨で付与していることから、正社員に対しては、勤続10年で3日、20年で5日、30年で7日の休暇を付与しており、パートタイマーに対しては、所定労働時間に比例した日数を付与している。
④ 検討を忘れていませんか
賃金などの同一労働同一賃金については取り組んでいる会社も多いようですが、福利厚生などについては検討が漏れている会社が見受けられます。パートタイマーにはウォーターサーバーを使わせない、インフルエンザの予防接種代の補助をしない、などもあるようです。
2障害者雇用率、来年4月より段階的に引き上げ
障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます。
① 来年4月に2.3% → 2.5%へ
まずは令和6年4月1日より、民間企業の法定雇用率が2.3% → 2.5%となります。これまで従業員数43.5人(※)以上の企業は障害者を1人以上雇用する必要がありましたが、この改正により従業員数40人(※)以上の企業が対象となります。
(※)一部業種では除外率が設定されており、これより多くなります。
② 令和8年7月に2.7%へ
さらに、令和8年7月1日からは2.7%に引き上げられ、従業員数37.5人以上の企業に障害者の雇用義務が発生することになります。
③ 計算方法は
自社で雇用すべき障害者の人数は、法定雇用率を使って下の式で求めます。
雇用すべき障害者数の計算方法 ( 常用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5 ) × 法定雇用率 ※週の所定労働時間が30時間以上の人を常用労働者、20時間以上30時間未満の人を短時間労働者と言います。 |
雇用している障害者のカウント方法は、障害の種類、程度、所定労働時間の長さによって下の表のように定められています。改正により令和6年4月からは青枠の短時間労働者もカウントできるようになります。
雇用している障害者のカウント方法(青枠は令和6年4月より追加) | ||||
週所定 労働時間 |
30時間以上 | 20時間以上 30時間未満 |
10時間以上 20時間未満 |
|
身体障害者 | 1 | 0.5 | - | |
重度 | 2 | 1 | 0.5 | |
知的障害者 | 1 | 0.5 | - | |
重度 | 2 | 1 | 0.5 | |
精神障害者 | 1 | 0.5 ※ | 0.5 | |
※一定の要件を満たす場合は、0.5ではなく1とカウントする措置が、令和4年度末までとされているが、省令改正により延長予定 |
④ 雇用率を満たせない場合は
法定雇用率を満たせない場合は、不足する障害者1人につき月5万円の障害者雇用法納付金を収めなければなりません(従業員数100人以上の企業のみ)。